
週末に自転車でうろうろしていたら、街の路地に隠れている可愛いカフェを見つけた。何よりも看板がないのが気に入った。ぱっと見は花屋さんみたいで、横を通る時に首をかしげてよく見てみた人だけがそのカフェの存在に気づける。あの日、カフェに座って外をしばらく眺めていたけど、通り過ぎる人たちがみんな前だけを見て歩いていて、ちょっと寂しかった。彼らは毎回通る道にこんな素敵なカフェがあることをまだ知らないのかもしれない。まあ、私も平日にはいつもそんな風に歩いているから、人生ってあまり変わらないもんだよね。
– クーポン押しましょうか?
二回目に行った時、注文を受けていた店員さんが突然聞いてきた。私はクーポンをしっかり集めるほど勤勉な人間ではないけれど、突然の質問に思わず頷いてしまった。
– 先週末にも来られましたよね?二つ押しておきますね!
その時、彼女は店員じゃなくてオーナーなんだなと気づいた。どんなに自主的な店員でも、マニュアルにない特典を提供するのは気が引けるだろうからだ。彼女はスタンプパッドを開けてクーポンスタンプにインクをつけた。そして、クーポンにスタンプをぎゅっと二回押して渡しながら
– あと8回押せば一杯無料になりますよ。
と微笑んだ。ありがたかった。座っている間にも結構多くの客が来ては去っていったが、一人で運営しているカフェなので少しでも客が集まるとかなり忙しそうだった。そんな状況でも彼女は「お待たせしてありがとうございます。」とか、「遅れてすみません、デザートも少し一緒にどうぞ。」と言いながら、にこやかに一生懸命動いていた。その姿を見て、以前一緒に働いていた同僚が突然カフェを開いて2年後に店を畳んだ時の言葉がずっと頭に響いていた。
– カフェにいるととても退屈です。
あまりに忙しいのも嫌だけど、あまりに退屈なのも耐え難いのかもしれない。個人的には客がいないと好きな音楽を大きくかけて本を読んだりして、ゆったり過ごせそうだけど、営業時間というのは仕事の時間みたいで、何をしていても早く過ぎてくれないといけないのかもしれない。
それでも、☕️
ちょっとだけ陽の当たるカフェの前の小さな木の椅子も温かみがあるし、🍃
風が吹くとふわふわ葉っぱが揺れるアイビーの鉢も可愛いし、🌿
何よりも
コーヒーが美味しいから
とても退屈な仕事を始めた彼女に応援してあげたいと思った。
